たいていの人は、手の小指を曲げると、なぜか薬指もいっしょに曲がってしまう。まるで小指と薬指が透明な輪ゴムかなにかで縛られているようだ。
でも、この連動性は決して絶対的なものではなく、訓練すれば独立して動かせるようになる。(でなかったらピアニストは飯の食い上げだ。)
それと同じように、たいていの日本人は「あいうえお」の母音を発音するとき、つい発声がのど声になりがちだ。慣れ親しんだ母音を出すときの口やのどや舌の動きが、のど声を出すフォームと無意識のうちに連動しているからだ。しかし、僕が「カナ縛り」と呼んでいるこの日本語とのど声の連動性も、実は絶対的なものではなく、意識して訓練すれば解きほぐせる。
「い」を例にとってみよう。日本語でできるだけはっきり「い」と言おうとすると、ただ口が横に狭く開いて「い」の形になるだけでなく、前にも述べたようにのどにもかなり力が入る。舌の奥の部分がのどを一瞬ふさぐが、そのあと少しのどにすき間ができて、そこを強く息が通り、少し開いた口の真ん中から前に出る。そしてこの息に声帯の振動が加わることで、強い「い」の音が出る。そのときに、下あごや首、のどがどれだけ緊張して固くなるかを確認しておくとよい。のど仏の上がり具合もチェックしておこう。
次に、「い」で開いた唇の形はほぼそのままに、口角をキッと左右に引っ張っていた力だけをやや緩めてみよう。声は出さなくていい。下唇は力を完全に抜く。上唇はやや上に引き上げ気味にして口の開きを維持する。こうするだけで、のど仏はかなり低く下がっているはずだ。
この形を崩さずに声を出すと、英語の短母音iにだいぶ近くなってくる。(声を出す時にもまたのどに力が入りやすいし、別にもう1つ大事なステップもあるのだが、そこは近々取り上げるので、とりあえずは声を出さずに、リラックスした口周りのフォームを意識してみよう。)
英語音読 |