前々回述べた、ボワッとした無指向性のmでのハミングが大切、という話からあるイメージが浮かんだので、今日はその話から。
唐突だが、宇宙戦艦ヤマトを頭に描いてみてほしい。この船には波動砲というのが備わっていて、船首に空いた小さな四角い穴からとんでもないエネルギー波が出てくることになっている。前回説明した発声のゲートは、この波動砲を発射する穴のようなものかもしれない。この狭いゲートを息が通るときに振動し、空気が声となって発射される、というイメージだ。ただし僕の理想とする声は、この正面の波動砲だけから出るのではなく、無指向性なのだ。つまり、正面にズドンと打ち放つのではなく、左右の側面にも波動を広げたいのである。正面よりも、むしろ側面に向かうエネルギーのほうが強いくらいがよい。ふつうの宇宙戦艦ヤマトと違って、この船には右舷と左舷にも1列ずつ小さな波動砲の発射口がずらりと並んでいて、発射されると正面だけでなく、左舷と右舷に沿って花火のナイアガラの滝みたいに、横っ飛びにエネルギーが噴出するのだ。あるいは、古代ローマのガレー船を思い描いてもいい。左舷と右舷から何十本もオールが真っ直ぐに突き出され、このオールに沿って声の波動エネルギーが左右に噴出するのである。
要するに、声がただ前方に向かって直線的に飛ぶのではなく、むしろ左右に平面を描きながら広がっていく、というイメージだ。
日本語的な発声は、ただ声を前に飛ばすことしか考えていないので、よくいえばストレートで力強いが、悪くいえば広がりがなく響きに乏しい。しかも発声のポジションが低く、のどを力ませて声を出すので、伸びやかさに欠ける(カナ縛り)。
これに対し英語的な発声では前方を意識するだけでなく、高いポジションから左右方向にも波動エネルギーを発散させているのではないか、というのが僕の仮説だ。
とすれば、英語的な声が滑り出すゲートは正面ゲートだけではなく、これに加えて、水平に切られたスリットのような長い開口部を持つゲートが左右にあるとイメージしてみるのもよいかもしれない。
この左右のスリット状のゲートは、なるべく開口部を狭く保ち、またなるべく高い位置に設けるべきだろう。口内のポジションをイメージするなら、上あごの左右の歯茎に沿った線あたりか、それより多少上ぐらいだろうか。
これを踏まえて、前回のハミングをもう1度さらってみよう。目と鼻の付け根あたりにある正面の狭いゲートを息が通り、そのときに振動して声が出るのだが(もちろんあくまで体感の話)、その際同時に、左右のスリット状のゲートにも同じく息が通るかのようにイメージして(これも体感の話)、横方向への波動を作るよう意識する。こうすることで、指向性のないハミングのmが生まれ、前だけでなく左右にも音が広がる。
この左右方向への波動をコントロールするという考え方は、英語という言語、特に日本人の不得手なlやr、f、v、thといった子音の発音のメカニズムから考えれば、もしかしたら意外にナチュラルで違和感は少ないのではないだろうか(これについてはいずれ詳しく説明する)。
少なくとも、左右方向への波動というパラダイムを意識してみるだけでも、新しい声の手がかりが見つかるかもしれない。
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